自然栽培米ができるまで

天神自然農園―米日記自然栽培とは

yama.jpg中国山脈を流れる清流

天神自然農園で、水田に引いている水は、山口県防府市の中心を流れる、佐波川という清流。この川は中国山脈の山々から流れ出る、山水が支流となって流れ出てきています。

mitani.jpg佐波川の支流、天神自然農園近くの三谷川

佐波川の支流、天神農園近くの三谷川の上流は庭園のように綺麗。そのまま水を何杯でも飲め、美味しい。コケが生えていて、庭園のようです。お米の味に大きく影響するものの一つに、水があります。天神自然農園の米づくりは、「土の力」「太陽の恵み」そして「自然の山水」からつくられています。

taiyou.jpg豊富な水量を誇る佐波川

多くの支流が流れ出た佐波川。天神自然農園のある山口県防府市は、佐波川の周りに広がる大平野で、日の出は早く日の入りは遅く、晴れの国岡山を上回る長い日照時間を誇ります。長い日照は作物の光合成を促進し、おいしいお米になります。おてんと様の力は偉大です。

senbetu.jpg次年度種モミを取る為、よい穂を選抜する。

次年度育苗の種にするために、出来のよい穂を選抜します。自然栽培では植物の遺伝子自体にその土地の環境を覚えてもらう為、毎年このように種を更新していきます。ちなみに自然栽培とは、化学肥料や農薬はもちろんの事、動物系の堆肥さえも一切使わないで育てた作物の事です。日本では有機JAS以上の格付けはありませんが、お隣の韓国では、慣行栽培→減農薬栽培→有機栽培→自然栽培と4つのランクに分けられているそうです。

dakkoku.jpg足踏み脱穀機で種モミだけに分離する

種はこのようにして足踏み脱穀機で稲から分離させます。 コンバインという稲を刈る機械で脱穀すると、種に傷がついてしまうのです。

ensuisen.jpg塩水選

種モミは、そのまま撒くのではなく、さらによい種だけを選抜します。塩水選といい、塩水に種モミを漬け、比重の重いものだけを選抜します。通常は、1.13程度で選ぶのですが、無農薬稲作ですので、より充実した種籾を選びたいため、1.15~1.17で選別します。ちなみに海水の比重は1.08です。

ontousyoudoku.jpg温湯消毒

通常のお米は、ここで1回目の毒毒しい、青い農薬プールに漬けるのですが、天神自然農園では、60℃のお湯に10分間浸けるだけの、温湯消毒。これだけで病気の元になる菌をやっつける事が出来るんです。農薬に浸けた籾から出来たお米は私も食べたくありませんが、問題は、その後の消毒液の処理方法なんです。川に捨てる人も多い。その点、温湯消毒で使ったお湯は、ただのお湯ですので、川に流す事が出来ます。自然にもやさしいんです。

mizutukeru.jpg冷水に漬ける

60℃のお湯の中に、種籾を10分漬け、10分たったら、すぐにお湯から引き揚げ、冷水で冷やします。しっかり混ぜて中のほうまで均一に冷やして、消毒を終えます。

medasi.jpg浸種~芽出し

浸種した種籾は、きっちり酸素を送ってやりたいので、1日に1回ほど水を入れ替えます。積算温度100℃~120℃(大体8日くらい)で、透き通ったようなアメ色になり、芽が出てきます。

naesiro.jpg苗代づくり

普通の育苗は、地面に苗箱を置いておいて、1日に数回水をやるのですが、天神自然農園では、苗の時点から田んぼの中で育てる、苗代というものをつくります。ここに苗箱を並べていきます。

momimaki.jpg種モミ撒き

通常の栽培では、一枚の苗箱全体に、種モミをばら撒きます。その方法だと全ての苗の根がからまってしまい、苗の時点で競合してしまいます。天神自然農園ではポット育苗という方法で、1つ1つが独立したポット形状の、特殊な苗箱に、平均2粒程度の種モミを播種し、強靭な苗を育てます。苗8分作、といわれ、苗の時点で将来が決まります。

mizuhari.jpg苗箱を苗代へ移動して水をはる

播種・覆土したらそのまま苗代へ。普通は室(むろ)という、高温多湿の中で発芽させますので当然病気が出やすく、またもやしのような芽が出ます。だから農薬と縁が切れないのです。天神自然農園では直接水田内の苗代に置き、水を張っては、抜き、乾いては水を張り、の繰り返しで、1つ1つのポットに田んぼと同じ厳しい条件を与えてやります。

syutuga.jpg出芽

普通の育苗が、ハウス内でもやしのような白い芽を出して、徐々に日光に慣らしていくのに対し、天神自然農園では、いきなり苗代に置いて、厳しい環境におきます。8日もすると、このようにいきなり緑のシャキッとした芽が出揃います。苗の時点から水田で育つので、田んぼに移植したときの順応も早いのです。

naefumi1.jpg苗踏み

獅子は子をがけから落とすと言いますが、ぬくぬくと育てた苗はひょろ長くなり、良い稲に育ちません。苗はしっかり節の間が詰まった、なるべく背の低い状態で太く育てるのがベストなんです。というわけで、まだ小さい時期から踏んで、背丈を押さえます。

naefumi2.jpg踏んだ後の苗

思い切って苗を踏んづけてやることにより、苗が起き上がるまでの間も、根の成長は続くため、太くて丈夫な、ズングリとした苗が出来るんです。

seibyou.jpg成苗

このように苗が大きく育ってきたら、いよいよ田植えです。ポット育苗ですので、苗同士が競合せず、伸び伸び青々と育っています。普通の苗箱の育苗だとこんなに大きくなるまで置いておくとお互いが競合するので黄色くなって弱ってしまいます。

taue.jpg田植え中

田植えです。しっかり太く短く育った苗を植えます。普通は稚苗という短い苗を植えますが、天神自然農園では、成苗という大きく育った苗を植えます。普通の平たい苗箱で育った苗を植えるときは、からまった苗の根っこをちぎりながら植えていくので根痛みが生じますが、ポット育苗苗の場合は根鉢ができているのでしっかりとした根のまま田んぼに移植することが出来ます。また、成苗を植えるので田植え直後から深水管理で草を抑えれるという特徴も有ります。普通の稲作では田植え前、苗箱に殺菌殺虫剤をばら撒いてから田植えをします。

chain1.jpgチェーン除草

普通の人は田植え後、除草剤を撒きます。田植の前と後、2回まく人もいます。田んぼの土表面に白い粒剤がおちているのがそれです。残留しないとはいわれていますが、きもちのいいものではありませんし、近年言われているミツバチ大量死の原因が除草剤や神経系の殺虫剤に含まれるネオニコチノイドという成分では?とささやかれており、フランスで禁止になっている薬剤もある中、日本はそんな動きすらありません。 ちなみに、全世界の中で、農薬使用率のトップは、残念なことに日本なんです。それでも、安心・安全とか言っているので、なんだか不思議な感じですよね。

chain2.jpgチェーン除草

天神自然農園ではこのように、たんざく状になったチェーンを、田の中で引っ張り、チェーンにより地表をかき混ぜて、発芽してきたヒエなどの雑草を物理的にひっこ抜いていきます。一枚の田で1週間おきに、計4回程度これを繰り返すのはかなりの重労働ですが、これをすることによってほとんどの雑草が発芽しては引っこ抜かれ、結果、除草剤をやらなくっても稲が育つわけです。

seicyou.jpg成長

天神自然農園では、田植え時に稲の株と株の間を33センチ×30センチと、かなり広めに植えています。(一坪あたり33株植え)そうすることにより、日光がしっかり株元まで入り込んで光合成がよく行われ、1株がしっかりムキムキに育っていきます。又、風通しも良く、病気になりにくくなります。

mizukanri.jpg朝晩こまめに水管理

夏の間、特に日中30度を超えるような日は、稲も熱射病になってしまいます。きれいな山水が豊富にながれているこのあたりでは、かけ流しといって水をどんどん流し入れては出すということを繰り返してやります。人間と同じように、稲も体の中を流れているのは水ですから。

syussui.jpg出穂

ついに穂がでて、開花です!稲の花は、まだ青いやく(将来モミ殻になる部分)がパカっと割れて、中から白くて小さいおしべが飛び出てきます。

toujuku.jpg登熟

開花・受粉をした後は、だんだんモミが太って、最後にはパンパンになります。天神自然農園ではなるべく長く田んぼにおいて置ける遅物(晩生)品種を選んでいます。登熟期を長くかせぎ、朝晩の温度差がついてくる10月まで置いておけると、その分、実にデンプンがしっかり転流し、おいしくて充実したお米に仕上がります。 コシヒカリ全盛の今、日本全国で、8~9月に稲刈りが行われていますが、美味しいお米を選ぶコツと致しましては、その地方の晩生品種(霜が降りる直前に刈るようなお米)を選んで買うとよいでしょう。コシヒカリでも収量減になるのを覚悟で遅く植えれば、収穫も遅くなり、美味しいお米がとれるのですが、結果、収入減にもつながりますので、通常は、なかなか実行されていません。

syuukaku.jpg収穫

大自然に感謝しながら収穫します。

nakabosisinai.jpg中干ししないので、稲刈りのときになっても地表がとても柔らかく、コンバインのクローラー(足)が埋まりそうになる。

中干しをしないので、稲刈りのときになっても地表がとても柔らかく、コンバインのクローラー(足)が埋まりそうになります。天神自然農園では、多くの生き物たちに、出来るだけ長い時間、田圃にいて欲しいので、通常行う、中干し(田んぼの水を一旦抜いて地表にヒビを入らせる)を行ないません。収穫時期になっても地表がとてもゆるく、コンバインが埋まりそうになりますが、人間都合の中干しは行なわないので、結果、最後まで青々とした葉っぱが茂っています。

dakkokucyuu.jpg脱穀したモミをバケットに移す

ワラともみをコンバインが分離し、ワラはコンバインで走りながら裁断して田んぼに還元します。分離したモミは、バケットに移し、量がたまったらこの次に乾燥機へ移す、張り込み作業をします。

kansouki.jpg小型の乾燥機で品種ごとに乾燥させる。じっくり時間をかけて、灯油バーナーを使わずに通風乾燥だけでお米の水分をゆっくり飛ばしていく。

通常はお米用乾燥機で灯油バーナーで熱風を当てながら乾燥させますが、短時間で乾燥ができる代わりに割れ米がでたりしてお米の品質が落ちます。また、はぜかけ米が良い、とよく言われます。これは本当なのですが、あくまでも晴天が続けばの話で、はぜかけしている途中に雨が降ると、米の水分が逆戻りしてしまい、逆に品質が落ちてしまいます。天神自然農園の場合は、複数の乾燥機を細かく品種ごとに使い分け、バーナーの熱風は使わず、通風だけでじっくりゆっくり、乾燥をします。分かりやすく言うと、ドライヤーで髪の毛を乾かすとき、熱風で一気に乾かすと髪が痛みやすいですよね。COOLの風だと時間はかかるけど、髪が痛みませんよね。お米も生き物なので、一緒なのです。

utusu.jpg乾燥したらもみすり機へ移す

乾燥した米は次にもみすり機に移します。このもみすり機で、モミをすることにより、摩擦でモミガラと玄米とに分離します。

suri-isinuki-keiryou.jpgもみすり、石抜きと計量

もみすり機から出ると、石抜き機で、石を除き、その次に計量機で30キロごとの米袋へ計量しながら詰め込みます。

kogome.jpg選別の基準を高めているのでこんなに良いものでもふるい落とされます。

これは「こごめ」。山口ではこごめといいますが、ようはふるい落とされたダメな米です。青米や乳白など、網目から落ちた米です。基準ラインを高めているので見た目こんなに良いものでもはじいています。

keiryou.jpg計量

お米を30キロ袋に入れるため、計量しては口を結んで閉じます。

kanryou.jpg完了!

袋をとじて、パレットに載せて、完了!保冷庫に移動します。

inawara.jpg収穫時に、稲ワラは裁断して天日で風化させた後に田んぼに還元します。

コンバインで収穫時、後ろから見たところ。稲ワラを裁断し、地面に撒いていきます。

taokosi.jpg田起こしして土を反転させ、稲ワラ分解を促進。土の団粒構造をくずさないように荒く起こす。

土まだ、日中の気温が高いうちに、田起こしして土を反転させ、稲ワラを土にすき込みます。土の団粒構造をくずさないように、にぎり拳大の大きさに荒く起します。稲ワラは、裁断して地表にあるままだと分解に時間がかかり、特に切り株は固まりになっていて分解するのが大変な為、トラクターで荒く起こしてやり、微生物の分解をしやすくしてあげます。

mizuharu.jpg収穫後、水を張れる田んぼは、水を張り冬をすごします。赤とんぼが卵を産みに来ていました。

収穫後、水を張れる田んぼは、水を張り冬をすごします。赤とんぼが卵を産みに来ていました。冬でも、水を張れる田んぼは、水を張り冬をすごします。これを行うと、イトミミズや多様な微生物のすみ家となるため、生態系を壊さず、さらに土が肥えるので、可能な限り行っています。

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